プレッシャーというのではなく、コーヒーにハマると、「もっと美味いコーヒーがあるのではないか…?」という観念にとらわれるのである。
これは、コーヒーの味を決める変数が多く、でも無限ではない、そのオタク心をくすぐる「ちょうどよさ」からだと思う。
一消費者としての立場で考えると、コーヒーの味に介入できる術といえば、お店に行って好みに近いと思われる豆を購入することになる。しかしコーヒーがここで終わらないのは、巷であふれる言説「コーヒーの美味しさを決めるのは、豆の質と焙煎で5割」という格言だ。
豆の質はわかる。「コーヒー豆は生鮮食品」と言われるだけあって、野菜などと同じようにやはり産地、鮮度が大事なのだ。これは紛れもない事実。しかし、ここに「焙煎」という、要素が加わるところに心憎さがある。人の技量が介入する余地を残しているのだ。
人の子たる私としてもこの誘惑に抗う術はなく、「自家焙煎」という沼に囚われてしまったのである。

気がついたら、網と「ブラジルNo.2」の生豆をAmazonで購入していた。びっくり。
普段焙煎済みのコーヒー豆を買っていると気づかないのだけど、生豆は結構ダメな豆が含まれている。特にカビているものは風味がガクッと落ちるのでこの時点で取り除いておく。

欠点豆を取り出し、イケてる豆を残す。買った網では1回に150g程度焙煎している人が多かったので、同じく150gを計量して焙煎することに。
結論:めちゃくちゃに煙が出て火災報知器が反応し、SECOMが出動する事態に。
自宅で火災報知器が鳴る経験は初めてだったけど、かなりけたたましい音が鳴る。生来気が弱い方なのでテンパって、「え!なに!なに!やだもう!」と喚きながら火災報知器の停止ボタンを連打していた。(連打はダメらしいね。同じ状況になった方は、報知器についている停止ボタンを1回だけ押して落ち着きましょう。)
豆は黒焦げ、SECOMには言い訳と平謝り。トラウマになりかけたけれども、そこは気が弱くもテキトーな性格に生んでくれた親に感謝するべきで、翌朝早速リベンジをすることに。
おそらく火に近すぎたのだろう、と仮説を立て、今度は胸の高さくらいに手網を掲げて焙煎することに。完全に「あつものに懲りて膾を吹く」状態。
すると大変なことに、通常12〜14分で豆がパチっと爆ぜる「1ハゼ」がくるのに一向に来る気配がない。30分経っても来ないので、みぞおちくらいに火に近づけてみる。
さらに10分経過しても一向に爆ぜない。それどころかガス缶の寿命が来ているのか、だんだん火力が弱くなっているようにも思える。これはやばいと思い手網をへその高さまで下げるも、結局60分経っても豆が爆ぜることなく、ガスが先にお亡くなりになった。

完成形。ハゼはしなかったものの、シナモンローストくらいにはなっただろ!と淹れてみることに。挽いた粉がこちら。

きなこかよ。色も怪しいけど匂いはもっと怪しくて、コーヒーではなく落花生みたいな匂いがする。
めげずにペーパードリップして飲んでみたけど、豆は膨らまない、味はまずい、匂いは落花生と最悪な出来だった。
ふてくされて倉敷に出かけておいしいコーヒーを飲んだら、「やっぱりコーヒーは美味いな」と初心に帰り、帰宅がてらガス缶を購入し、3度目の挑戦。
これまでの反省を生かし、火力は中火固定、手網の位置はみぞおちからおへその間。

やってやりましたよ。
13分ほどで1ハゼがきて、そこから2分焙煎を続け、2ハゼが始まる前に終了。
よい中煎りになったのでは。
においが完全にコーヒー豆のそれで、かなりテンションが上がっている状態。
焙煎したての豆は味が落ち着いていないので、本当は1日おいたほうが良いのだけど、焙煎童貞を卒業したばかりのこちとらはそんな悠長なことをしていられず、即刻挽いてペーパードリップで抽出。

コーヒーの色と香りだぞー!
味は「あ、だから1日置けって言うのか」と実感できる感じ。味わいが薄い、決して美味しくはない。でも、はじめて自分で焙煎ができた高揚感で「味なんて関係ない、俺は今ロマンを飲んでいるんだ」という気分で気持ちよく飲んだ。(翌日飲んでみたら、ちゃんと美味しくなっていた)
備忘録に、焙煎時の注意事項をまとめておく。
・部屋の換気はしっかり行う。
・焙煎しすぎると煙が立ち始めるので、深煎りはあきらめて浅煎り〜中煎りにしあげる。
・チャフ(薄皮)で相当汚れるので家族の同意と掃除をしっかり。
・記録のため、タイマーをセットする。iPhoneの場合、画面の自動オフを解除しておかないとロック解除が煩わしい。焙煎中のロック解除は結構難しい。
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